ジンジャー神社というのをご存じだろうか。

なにをしょうもない洒落を、と思われたかもしれないが、実在する神社なのである。

この狂った神社が存在するのは、栃木県栃木市にある「岩下の新生姜ミュージアム」。生姜やらっきょう、梅干しなどの商品を手掛ける岩下食品が運営している。同社の目玉商品である「新生姜」の魅力を人々に伝えるのがねらいで、展示品やアトラクションからは生姜に対する並々ならぬ熱意が感じられる。ある種の狂気が垣間見える程度には。施設全体が新生姜色——とどのつまりピンクである——で統一されていることも、その異様さを増長させている。

そこそこちゃんとしてるのが腹立つ

神社というからには、当然御祭神がいる。ジンジャー神社に祀られているのは「鹿角生姜命（しかつののしょうきょうのみこと）」。鹿の角(の格好をした生姜)が生えた生姜の神様である。よくもいい感じに神様然とした名前を考えたものだと思う。ならば神社自体のネーミングももっと何とかならなかったのかとも思わないでもないが、「ジンジャー神社」というしょうもないシャレだけは譲れなかったのだろう。というかもうジンジャー神社って言いたいがためだけに、この大掛かりなミュージアムを作ったのではないか。もしそうだとしたらとんでもない大人の悪ふざけである。

神社と言えば、本殿の両脇を固め参拝者を出迎える狛犬である。ジンジャー神社で狛犬の役目を果たすのは、御祭神と同じく新生姜の角を持つ「イワシカ」。なんとも言えないゆるい表情が特徴的だが、その頭にはそこそこゴツめの生姜が突き刺さっている。少々アンバランスな感じがしなくもないが、そこがいいのかもしれない。カワイイとは不思議な概念なのである。

狛犬ならぬ狛鹿に続き、神社につきものであるおみくじや絵馬、お守りなども完備。「ジンジャー神社に参拝したら願いが叶った」という声もあるというから驚きだ。鰯の頭も信心からというし、生姜も人々の信心さえあれば神様に変わるのであろう。信仰とは恐ろしいものである。

肝心の御利益は「生姜のポカポカ効果で人の心を温め、恋愛成就、夫婦円満、健康長寿」。さらには生姜には覚醒作用があることから「交通安全、学業成就」などがある。メジャーどころは一通り網羅している、なかなかに手広い神様である。今後は、どうにか生姜とこじつけて「金運」「商売繁盛」あたりも手掛けていただきたいところだ。

企画担当者の精神が心配

ジンジャー神社の他にも気の狂った展示が多くある。生姜の漬け液の自動販売機、新生姜色——再三申し上げるがピンク色である——のグランドピアノ、新生姜と恋人気分を味わえる新生姜の部屋などなど。新生姜と恋人気分、いったいどこに需要があるのだろうか。そもそもいったいどんな精神状態であればこんな展示を考えつくのだろうか。相当思い詰めていたのだろうか。もう生姜でいいや、的な。気持ちは分からないでもないが、生姜はさすがにレベルが高すぎる。もはや超次元である。男も女も星の数ほどいると言うし、もう少し人間に希望を持ってもいいと思う。

【アクセス】

「秀樂」

住所：愛知県名古屋市中区錦１丁目５−１

電話：052-212-2460